世代を超えたウイスキーのつくり手たちが『伝承』を語る

今回の記事は第4回を迎えたCELLARR SALONの様子をお伝えするレポート記事。

ウイスキーのオンライン社交場としてスタートした CELLARR SALON。
多くの方々のご協力頂き、今回も開催することができました。

今回のゲストは、長きに渡りジャパニーズウイスキーの啓発活動を行い、いまもその活動を支え続けているレジェンド輿水精一氏と、これからを担うクラフト蒸溜所で活躍する五名のつくり手たち。

「つくり手の伝承」と題し、蒸溜所の垣根を越えたつくり手たちの熱きスペシャル談義の模様の一部を皆さんにお伝えします。

1. 今回のゲスト

■ サントリー株式会社 名誉チーフブレンダー
TisTa株式会社 CELLARRアドバイザー

輿水 精一 氏

■ 本坊酒造 チーフディスティリングマネージャー兼ブレンダー
草野 辰朗 氏

■ 本坊酒造 ウイスキー製造主任兼ブレンダー
河上 國洋 氏

■ ベンチャーウイスキー ブレンダー
三澤 秀 氏

■ ベンチャーウイスキー ブレンダー
奥山 太郎 氏

■ 津崎商事・久住蒸溜所 ウイスキー製造責任者
武石 裕 氏

今回は過去三回のつくり手と飲み手の社交場とは打って変わり、つくり手同士のスペシャル対談。
業界の大先輩に若きつくり手たちから、どのような質問が飛び出すのか!?
固唾を飲む、痺れる時間となりました。

2. ゲスト対談

辻(ファシリテーター):
本日はよろしくお願いいたします!
早速ではありますが、輿水さんに質問したい方お願いします。

草野さん(以下敬称略):
では、最初によろしいでしょうか!
ちょっと技術的な話ですが、新商品のウイスキーをブレンドする際に、まず最初に樽から出した少量のウイスキーでテストブレンドを行い、方向性を考えると思います。

しかし、レシピ決定後に実際に樽出しをしてブレンドを行うと、味の印象がすごく変わるなと個人的に思っております。
もちろん最終のブレンドをしたものが商品になるのですが、輿水さんはテストブレンドと実際の大きいロットでのブレンドに対する印象の変化をどのように考えていらっしゃるのかを、ずっと聞きたかったです。

輿水さん(以下敬称略):
確かに私もテストブレンドと本番のブレンドの違いはしばしば体験しました。
商品化にあたってのロットが小さい程、その傾向は強く、例えば最初に試作する際に貯蔵中の樽から原酒をサンプリングしますが、樽の中の「上面」から採るか「真ん中」から採るか「下面」から採るか、これだけでも大きく変わってきます。

これはロットが大きくなればなるほど、その誤差は少なくなる傾向にありますが、小ロットだと誤差が大きく、サンプリングの段階でも注意してやった方が良いなと言うのが正直な所です。

草野:
なるほど。サンプリングのときは、樽の中を混ぜてから行った方がいいのですか?

輿水:
それでも良いと思います。樽の底の方から採るようにする事で樽材抽出物の影響の強いものが出てくる事が有るなと感じますね。樽の中は殆ど均一なイメージをもっていましたが、実はそうでもないなと感じます。

草野:
勉強になります。ありがとうございます!

辻:
草野さん!いきなり良いですね、
ぶっ込んでる感もありがとうございます(笑)
ちなみに樽内の上中下の話しですが、下の方が沈殿する関係で濃い状態、ということですか?

輿水:
そうですね。そういった事を意識するとなると、ブレンダーが自らサンプリングした方が確実なんだろうなと。

草野:
すごく分かります、そうですね。
最近自分でサンプリングする機会が少なくて、良くないなと思っておりました。
 
辻:
なるほど。メンバーに持って来てと頼んで、持ってきてもらう形になっているんですね。

草野:
はい、なかなかその他作業も忙しく、サンプリングは他スタッフに甘えているのが現状です。

辻:
それだけ多くの原酒の中から商品開発をされているのですね。
輿水さん、草野さんありがとうございます!

河上さん(以下敬称略):
ブレンドの話が出たので、僕もよろしいでしょうか?
弊社チーフブレンダーの久内が、輿水さんから「ウイスキーには柿のフレーバーがある」と言う事を教えて頂き、駒ヶ岳の2021エディションでも、柿のフレーバーをテイスティングコメントに書きました。信州蒸溜所のある南信州の特産品に「市田柿」があるので、これからも柿という表現を使っていきたいのですが、この柿のフレーバーについて詳しくお聞かせいただけますか?

市田柿(出典:南信州農園)

輿水:
この柿のフレーバーと言うのは恐らくサントリーの中でも私が最初に使い始めたと思うのですが、柿自体はそこまで香りの強いものでは無いですよね。

山梨ではころ柿と言われる干し柿、言ってしまえばドライフルーツがあります。乾燥度の具合によっても違いますが、干し柿を口に含んだ時のフレーバー、口の中に漂う感じを山崎をテイスティングした時に「これは間違いなく類似した香りがあるな」と思ってから使うようになりました。

ただ、それに対して熟した柿のフレーバーを、果たして海外の人は理解できるのか?と言われた事はあります。マーケティング担当者や海外の方も含めて、もっとお客さんに分かりやすい言葉で説明した方が良いのでは無いか?と言う意見もあったのですが、僕はむしろ「やっぱりブレンダーがそう感じた言葉を使うべきなんじゃ無いか?」と思うんですね。

フランスのワインのテイスティング用語は、日本人にはなかなか理解し難い言葉が多いと思うのですが、それに対してフランスのワインのつくり手に対して「もっと日本人に分かり易いように言葉を選べよ?」なんて言わないですよね。

むしろ私達の方がその言葉を理解しなければいけない。嗜好品は、それがつくられた場所の食文化を強く反映しているし、そこでの固有の言葉が出てくるのは、むしろ地域性が非常に強いウイスキーみたいなものにはピッタリなんじゃ無いかなと。

海外のウイスキー好きの人には、「何を言ってるんだ!柿のフレーバーを勉強しろ!」という姿勢でもいいのでないかなと。もちろんコレは言い過ぎですが(笑)フレーバーを表現する時に、なにが一番フィットしてるかが大事だと思います。

河上:
ありがとうございます!
例えばフルーツの桃やぶどうはお菓子やジュースが有るので、味や香りが共有しやすいと思うのですが、柿は一般的にお菓子やジュースが少ないので、みんなでこの香りや味を共有しづらいのかなと言う不安があったりしまして、ちょっと悩みました。

輿水:
そうですよね。どっちが親切なのか分からないですけど、でもそういう言葉を聞いて、「えっ?これってなんだろう?」と関心を持っていただく事も、それもまた一つかなとも思いますよね。思い上がりだとも取られてしまうかも知れないのだけど(笑)

テイスティング用語って並んでいる順番ってもの凄く大事だと思うのです。それが筆頭に出てくるのか二番目に出てくるのかに三番目なのか。頭に柿って出てきたら、コレは相当飲み手の方も「えっ?コレはなんだろう?」と思うはずです。

並んでいる順番で説明する側がまず一番最初に浮かべるのがそれだということを表している。コレはワインでもスコッチのテイスティングコメントでもそういうものだと僕は思っています。頭の一つ二つみたいなのは、やっぱりちゃんと理解したいなって思いますよね。

辻:
ちなみに今のお話を受けて、河上さんはどっちに振っていくんですか?海外の人にはよく分からないかもしれない柿という表現を使うか、他のフレーバーでいくのか。

河上:
僕は地域性という意味でも柿というワードを使っていきたいなと思っているので、布教の意味も込めて言っていきたいと思います。教えていく意味でも。

草野:
河上さん、普段から干し柿を持ち歩けば良いんじゃないですか?(笑)

河上: 
そうですね(笑)そこもやっていかないとダメですね。

辻:
ご参加者から、この柿のフレーバーは樽由来なのか、ニューポッドからも感じるのものですか?とチャットにてリスナーから質問が来ております。河上さんいかがでしょうか?

河上:
今のところはシェリー樽なのかなと考えてます。ドライフルーツのニュアンスですね。まだ完全な答えは出てないのですが、そのように考えております。

三澤さん(以下敬称略):
ちなみに秩父のバレル熟成の原酒は枇杷(びわ)の香りがしますよ!前に海外のブレンダーの方が秩父に来た時に「お前らのウイスキーの特徴はなんだ?」と聞かれた時に枇杷の香りがするって言っても伝わらなかったですね。それでGoogleとかで調べてようやく伝わったんですけど、その時に「お前らの国でしか出てこない表現は、そう言った方が絶対に良いよ!」と言われました。なので、柿は良いんじゃないかと思います。

河上:
ありがとうございます!

辻:
ありがとうございます!柿が響き渡っていますね。
この後もマルス信州蒸溜所のフレーバーが愉しみですね!奥山さんはいかがですか?

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