海外で活躍するバーテンダーとお酒の価値を見つめる 〜第6回 CELLARR SALONを終えて〜(第1回/全3回)

月に1回、ウイスキーそのものやウイスキーにまつわる話しが好きな方々が集い、ここでしか聞けない話を愉しむウイスキーのオンライン社交場 CELLARR SALON。今回は本イベントのレポートを全3編に分けてお送りします!

今回のゲストは、バーテンダー出身で現在は株式会社ベンチャーウイスキーでブランドアンバサダーとして活動をされている吉川 由美さんとバーテンダーとして世界で活躍されている坪井 吉文さん、遠藤 真彦さんのおふたりです。

世界で活躍されている御三方のお話しにその場は、大興奮のイベントとなりました。バーテンダーならではのカクテル、レシピの話しや海外のBAR運営事情などニッチな内容も飛び出した今回。

レポート記事から、臨場感もお愉しみください(来年から、有料会員様向けに動画でのアーカイブも公開させて頂く予定です)。

今回のゲスト

■ 株式会社ベンチャーウイスキー グローバルブランドアンバサダー
吉川 由美 氏

1981年 、栃木県生まれ。帝国ホテルにてバーテンダーとして勤務した後、2008年にニューヨーク、2011年にスコットランドへ渡る。スペイサイドのウイスキーBar「ハイランダーイン」でバーテンダーとして従事し、その間アイラ島のブルックラディ蒸溜所にてウイスキー造りに携わる。日本帰国後、現在は(株)ベンチャーウイスキーにてブランドアンバサダーとして勤務。2019年、ウイスキーマガジン社主催のアイコンズ・オブ・ウイスキーにて、ワールドウイスキー・ブランド・アンバザダー・オブ・ザ・イヤーを受賞。また、同年7月に(株)ハイランダーイン・ジャパンを設立し、代表を務める。

■ ジャパンバーテンダースクール・ジャパンカフェスクール校長
坪井 吉文 氏

1976年、広島県生まれ。1996年、20歳にしてBARROBROYを開業。若手の頃から各種カクテルコンペティションに積極的に参加し、国際大会も含め約50回以上の受賞経験がある。現在、自身が経営する直営店のBARは国内6店舗あり、さらに飲食店開業のコンサルタントした店舗は80店舗以上。 さらに中国・韓国を中心としたアジア各国でもBARをプロデュースし、BARアワードを受賞するなど世界的な活躍をしている。 現在はジャパンバーテンダースクールの校長として、毎年全国から集まるバーテンダーの卵120~150人を育成、卒業生を輩出し、日本各地・アジア各国でセミナーを開催するなど、バーテンダー文化普及の為に活動を続ける

■ MIZUNARA:THE LIBRARY ジェネラルマネージャー
遠藤 真彦 氏

1974年、京都府で生まれ、すぐ神戸市に移住し小学生活を過ごし、中学からは福岡に移る。1997年より福岡にてバーテンダーの仕事を始める。2004年にシンガポールでのジョンホワイトコース、現エリートバーテンダーコースに参加。2008年、サントリーカクテルアワード最優秀賞。2014年11月より香港でジャパニーズスタイルバーMIZUNARA : THE LIBRARYの企画、開店にジェネラルマネジャー、パートナーとして参加、2015年2月にグランドオープンする。2017年TEDx HONG KONGのスピーカーに選ばれ、日本のおもてなしのホスピタリティー※についての講演。2017年より香港IWSC(International Wine and Spirits Competition) のスピリッツジャッジ、2022年はパネルチェアーを務める。2018年より系列酒販店MIZUNARA THE SHOPを開店、商品企画、輸出入のアドバイザーを兼務、現在に至る。

海外で大人気のカクテル「ウイスキーサワー」って?

ーー本日はよろしくお願いいたします!それでは早速、ゲスト対談からいきたいと思います。
遠藤さんから、宜しくお願いします!

今日はこのような会に参加させて頂いて、ありがとうございました!私登壇者と言ってますけど、私自身、勝手に楽しんでおりました(笑)本当に楽しい機会を、また日曜日の貴重な時間にありがとうございました。

ウイスキーサワー

ーーありがとうございます!ご質問の前提として、遠藤さんは香港で長い間バーテンダーをやっておられます。そういった意味で、海外と日本のウイスキーの楽しみ方の違いや幅の広さなどを生の声でお伝えする場にできたらと思っています。

それではバーテンダーさん同士という事で坪井さん、この質問に対する回答はいかがですか。

韓国の場合だと、日本人からするとビックリなんですけどマッカランよりバルヴェニーの方が人気です。同じ系統ではあるんですけど、すごく飲みやすいこともありますし、もうバルヴェニーがダントツで人気ですね。

ーーウイスキーサワーって皆様ご存じですかね。上の年代の方だとピンときていらっしゃる方もいるかと思いますが、私の年代だとあまり聞き馴染みがないので、それより下の年代だと日本では全く知らないって方がいるのかもなと、勝手ながら思いました。事務局で20代の毛利さんはどうですか?

毛利:
僕は、ニューヨークで過ごす時間が長かったので、知っていました。それこそ現地のバーではよくウイスキーサワー頼んでいて、好きでした。でも確かに同世代ではあまり知ってる方はいないかもしれないですね。

ーーなるほど。そんな感じなんですね。
ベンチャーウイスキーとして美味しいウイスキーを提供されているの吉川さんは、このカクテルの切り口もそうですし、ベンチャーウイスキーを使った場合はこんな楽しみ方もおすすめ、といった視点でお答え頂けますと嬉しいです。

やっぱりアジア人=色の濃いもの・味の濃いものが好きというイメージで、シェリー系が好きと思われがちなのですが、海外のメーカーさんや代理店さんとお話しすると、日本人のウイスキーに成熟した人が欲しがっているのって、リフィルバレルとかバレル系のものが日本人は好きってイメージを持っている方が案外多いんです。
自分達もいろいろと海外にウイスキーを輸出しているので、ここの国はこういうのが受けるんじゃないかなって考えたりもするんですけど、案外その国に足を運ぶと、シェリー系がいけるんじゃないかって思っていても全然バーボン系の方が好きな方が多かったりですね。
遠くから見てるステレオタイプなイメージだけで戦略を練っちゃうと、案外現地の状況と違ってきちゃう事もあると思っていて。なので変に決め打ちしないで現地に足を運んでいろいろ聞いてみて、イメージだけで走らないようにしないとなって、ここ数年感じている事ですね。

海外ではウイスキーカクテルも人気

そうですね。香港では少数ではありますが、ウイスキーは絶対にストレートじゃないとダメだよねって方も勿論いらっしゃいますし、それをお連れ様にも強要するという方も当然いらっしゃいます(笑)

あと海外で比較的に感じるのは、皆さん結構自由な、自分の飲み方をしたいという人が多いなってのは感じますね。ただ香港に関していうならば、やっぱりまだシングルモルト=絶対に何もいじっちゃいけないってイメージが強いのかな、とは感じますね。

ーーありがとうございます、とても参考になります。坪井さんもお願いします。

はい、私は一ヶ月の半分は日本、半分は海外という生活が長かったので、すごく違いが分かりやすかったです。遠藤さんのおっしゃる通り、海外は自由ですね。ウイスキーを自由に楽しむという文化があるなと思います。

日本だと、それが良いウイスキーであればある程、やっぱりちょっと勿体無い、素材の味をそのまま楽しみたいって方が多くいる印象がありますね。

余談ですが、韓国とか中国で仕事をする時、先ほどのウイスキーサワーなどのカクテルは、レシピ通り、カクテルブック等に載っている通りに初めは出していたんですけど、そうするとなんかつまんないみたいな顔をされる事が非常に多くて。「あなたのウイスキーサワーはどうな感じ?」みたいな、いつもオリジナリティを求められる印象がすごくありました。

逆に日本は伝統を守るというか、決められたレシピで誰よりも美味しくつくれるか、みたいな美徳を感じる部分があるのかなって思います。そこがすごく面白い所でした。

ーー吉川さん、お二人の意見お伺いして、どうでしょうか?

結構いろいろと思い当たる節もあって面白かったですね!さっき遠藤さんもおっしゃっていた、自分の飲み方を相手にも強要するとか、そういう人もいたなとか(笑)
坪井さんがおっしゃっていたように、日本と海外とでは文化的な違いはBARで見ていると面白いくらい分かるんじゃないかなと思って。BARって色んな人から雰囲気から文化が見える場所なんじゃないかなって、改めて感じました。

ーーベンチャーウイスキーのウイスキーの楽しみ方についてのお話しなどありますか?

例えば、ベンチャーウイスキー社長の肥土も「ウイスキーはストレートじゃないと嫌だ」というようなタイプではなくて、案外ソーダ割りで飲んだり、お湯割りにしてみたりとか。あとはいろいろ出張で世界に行く中で、BARにオールドファッションドが有ったらオールドファッションドを頼んでみたりだとか。やっぱりいろんな飲み方を試して楽しんでいる印象があります。

私自身も元々19歳からバーテンダーをしていた中で、あんまり堅苦しくウイスキーを枠にはめて飲むという形だと、文化としての発展は難しいんじゃないかなと思っていて。やっぱり一人一人が楽しめる飲み方っていうのを自由にやっていった中で広がっていくのかなって思ってます。

まあ、ひと口もストレートで味を試さないで、いきなりコーラで割っちゃうとかっていうのは、一回試してみてからにして欲しいかなとは思うんですけど(笑)いろいろなカクテルとかで、「こんな味わいもあるんだ」って新しい発見をして頂くってのは、つくり手としてそんなにNGでは無いなって思います。

ーー良い話しですね。肥土さん自身が何よりウイスキーが好きだってお話しだし、心からウイスキーファンが増えて欲しいって想いでつくっておられることって凄いことだと思います。お客さんの事を色々考えているのが伝わりますね。ありがとうございます。

BARによって違う「ウイスキーサワー」のレシピ

実は本日は、過去登壇者枠で、第3回CELLARR SALONゲストのBAR芦屋日記 草野さんにも、ご参加頂いております。折角ですので何かありましたらお願いします。

草野さん(以下敬称略):
ありがとうございます。
遠藤さんと坪井さんにお伺いしたいんですけど、ウイスキーサワーを海外の方につくる時に、僕はライウイスキーを使うんですけど、お二人だったら何も指定がない時はベースウイスキーは何を使われるのかなって少し気になりました。

どのウイスキーが合うのかは気になります

はい。私はですね、何も指定がなければちょっと樽香の強いバーボンを使うようにしてますね。個性の強いやつを使うイメージですね。例えばブレットやワイルドターキーとかを使ったりして、卵白も入れて、アンゴスチュラビターズをかなり多めに入れつつ、最後にレモンの香りを付ける、みたいなプラスプラスの考えですかね。こう、味を重ねていくと美味しくつくれるかなって印象があるんです。

これも余談ですが、卵白を入れるとどうしても卵っぽい感じが残っちゃうのが、バーテンダーの悩みだと思うのですが、韓国で僕が教わったやり方で、ハンドブレンダーでものすごく溶いちゃうんです、卵白を。

よくフローサーっていう、コーヒーミルクを泡立てる機器を使う事が多いですが、ハンドブレンダーだと、その十倍くらいのパワーなんで、それで一気にガッと溶いちゃうと、卵っぽい感じがなくなって、卵白の良さのフワフワ感だけが残るみたいな。そんな感じで教わって、しばらく私もそうやってつくってます。

草野:
ありがとうございます!

ーー遠藤さんもお願いします。

ウチは今は指定がなければ、スコッチウイスキーのジョニーウォーカー ブラックでつくってます。それに卵白、レモン、シュガー。ジョニーウォーカーってブレンデッドの中でもスモーク感がほど良くあり、ほんのり香る所が好きという方が多いんですね。

先程、坪井さんもおっしゃっていましたが「あなたのつくるウイスキーサワーって?お店のウイスキーサワーはなんなの?」っていう時の、ウチのウイスキーサワーはスコッチウイスキーを使って少しスモーキーに香るのがウチのウイスキーサワーなんだよって事でつくってます。

あとは普通はウチはスリーピースのシェイカーを使う事が多いんですけど、卵白とかが入っている物に関してはツーピースのシェイカー使って、空気をもっとバアーっと含ませた形でホイップさせるやり方をしてますね。

あと、ウチではビターは入れないですね。スコッチウイスキーの持っている繊細さみたいなものを、私は感じて頂きたくて、あえてビターを省いてもっとウイスキーをダイレクトに味わって頂くようなウイスキーサワーにしています。

草野:
同業のマニアックな質問に、ありがとうございました(笑)

ーーありがとうございます!僕自身もウイスキーサワーの深さの虜になっています。バーテンダーの皆様のこだわりが詰まってますね。

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