地域のテロワールを生かしたウイスキーづくり 〜第7回CELLARR SALONを終えて〜(前編/全2回)

月に1回、ウイスキーそのものやウイスキーにまつわる話しが好きな方々が集い、ここでしか聞けない話を愉しむウイスキーのオンライン社交場 CELLARR SALON。本記事では、第7回を迎えた本イベントのレポート記事を全2編にてお届けします!

今回のゲストは、本坊酒造マルス津貫蒸溜所でチーフディスティリングマネージャーを務める草野 辰朗さんと2021年より新潟にてウイスキーづくりを開始した新潟亀田蒸溜所の堂田 浩之さんです。

おふたりともウイスキーが大好きでつくり手になった共通点があり、つくり手としても飲み手としても大変盛り上がったイベントとなりました。

レポート記事から、今回のイベントの雰囲気をお愉しみください。
(来年より、有料会員様向けに動画でのアーカイブも公開させて頂く予定です)

ゲスト紹介

本坊酒造株式会社 マルスウイスキーチーフディスティリングマネージャー兼ブレンダー
草野 辰朗 氏(以下敬称略)

合同会社新潟小規模蒸留所 取締役社長
堂田 浩之 氏(以下敬称略)

ゲストトーク

ーー本日もどうぞよろしくお願いします!

色々な話ができるのを愉しみにしております。
これは先日、新潟で堂田さんと一杯やってきたときの写真ですね(笑)

草野さん(左)と堂田さん(右)(出所:ご本人)

新潟亀田蒸溜所というブランドで2021年から蒸溜を始めております。
皆さまよろしくお願い申し上げます!この時も愉しかったですね。

ーーこちら、いい写真ですね!先日、新潟に行かれたときですかね。
草野さん、新潟亀田蒸溜所はいかがでしたか。

そうですね。亀田蒸溜所さんの原酒もいろいろ飲ませて頂きましたし、
今度リリースされるニューボーンも試させて頂きました。
 
本当にクオリティが高いなと素直に思いましたし、堂田さんのパッションも感じられるし、方向性も面白いし、たくさんの取り組みもされているので、自分も頑張らなければと思ったのが正直な感想です。

ーーありがとうございます。堂田さん、草野さんの一言を受けていかがですか。

ありがとうございます。
いろんなウイスキーのつくり方はあると思いますが、僕らはまだ新興蒸溜所ですし、熟成してどのようなものが出来上がるかはまだまだ未知数な要素が大きいので、とりあえず美味しいニューポットを作ろうということに集中してきたつもりです。
 
まあ、そのベースとなるのも津貫蒸溜所で研修を受けさせてもらって、
その中でいろんな知識やこれから向かっていく方向性のヒントももらったので、
それを今、実践している最中です。
その中で今回のニューポットをリリースさせてもらった次第です。

新潟亀田ニューポット Niigata Barley(出所:亀田蒸溜所 公式HP

ーーありがとうございます!

私もこちらのニューポット飲ませて頂いたのですが、原料に対するこだわりがすごいなあと感じました。すごく美味しかったです。

それでは、ゲスト対談本番といきましょうか。
草野さんと堂田さんは津貫研修時代から徒弟関係にあるということで、草野さんを慕っている堂田さんからお願いします!

はい。ありがとうございます。
最初に草野さんにお会いした時からお若くして津貫のウイスキーづくりを任されていて、本当に尊敬しています。いつくらいからお酒を飲まれ始めて、どのように勉強をされてきたのかなあというところは聞きたいなと思っておりました。

お酒を飲み始めたのはもちろん20歳からだったのですが、お酒に興味を持ったのはかなり前でしたね。小さい頃から家にレモンハートの漫画があったりとか。
 
ただ将来、ウイスキーづくりをしたいとかは全く考えたことはなくて、もともと化石の研究をしたりとか、登山が好きだったので、気象予報士になりたいなあとかも考えていました。
 
だったのですが、在学中に「天文館」という鹿児島の繁華街でアルバイトを始めたときに、先輩方にたくさん飲みに連れて行ってもらったというのがお酒との出会いでしたね。

BAR レモン・ハート第1巻 (出所:アマゾン 公式

レモンハートは共通のバイブルかもしれないですね。
私も大学生のころ読み漁っていました(笑)

面白いですよね。
 
で、そういったものを通してカクテルや芋焼酎から入って、たくさんのお酒を試すようになったんですね。そうやって試していくうちにウイスキーが僕の中ではすごくかっこよく映って、ウイスキーを造ることを仕事にできたらいいなと思って、元々理学部だったのですが、大学院で専攻を変えて農学研究科の焼酎のことを学べる研究室に進学し、そこで醸造学を学び本坊酒造に2013年に入社しました。

日本国内はもちろん、スコットランドなど海外に関しても詳しいのですごいです。
スコットランドはどれくらい行かれたんですか?

まだ2回くらいです。この間、2回目に行ったのですが、体調を崩してしまったので蒸溜所もあまり回れず、苦い思い出ですが(笑)
スコットランドは本当にいいところですよね。今すぐにでも行きたくなります。

ーーそうなんですね。草野さん、今おいくつでしたっけ?

今年で34歳になります。

ーー草野さん、いま34歳っていう中で、もう7年前の津貫蒸溜所の立ち上げを1から経験されているんですよね。そういった経験を、素直に堂田さんにも伝承されているってところがすごいなあと思いますね。 お二人にお聞きしたいのですが、これまでウイスキーづくりに携わってきた中で1番「愉しい」と思うポイントなどはありますか?

そうですね、やっぱりクラフトだと製造工程の全てに関われるので、いいですね。
原料はこれにして、それを砕いて、マッシングして、発酵させて、蒸溜して、ミドルカットまでして原酒ができるっていうところまで。各工程それぞれにこうやったらこうなったという変化もあって面白いです。
 
こうやってつくったのが、今こうなって、これはこうなって…っていうのが今やっとわかり始めているので、「あっ、あのときのニューポットはこんなに成長したのか」ということもあって。
 
それがいい方向にいく時もあれば、よかれと思ってやってみたら意外とよくなかったということもあるんです。そういったところが常に新しい経験にもなるし、発見にもなるので、やっぱり長い時間をかけて造るっていうところの途中経過と始まりを知っているから、というところがやっぱり愉しいなあと思いますね。

ーーそんなすごい経験をして、今34歳ですものね。考えられないですし、今参加されている久住蒸溜所の武石さんはもっとお若いですからね。九州はチャレンジャーが多くていいですね。

僕も1番最初は20歳のころに余市蒸留所に行ったことを今も覚えていますが、それを踏まえてもすごいなあと思います。それこそ、僕が津貫に研修に行った時と先日伺わせて頂いた時で原酒が全然違うんです。
 
やっぱり、日々進化しなきゃなだなと刺激になりました。

ーーありがとうございます。堂田さんはいつ研修に行かれたんでしたっけ?

2019年の10月ごろでした。

ーー草野さん、堂田さんの第一印象はいかがでしたか?

大きいなあって思いました(笑)
本当に物腰が柔らかくて、一緒に飲みに行きましたし、私の自宅にも一度来られましたね。ウイスキーがとってもお好きで、パッションがある方なので、うちのスタッフもみんな堂田さん大好きでした。
 
またお越しになるのを愉しみにしています。

草野さんのご自宅のウイスキーコレクションもハンパないですよね。
なんでも飲んでいいよって言われましたが、さすがに(笑)

いえいえ。今は減る一方で…(笑)

ーー愉しいですね(笑)
最近飲んだウイスキーで印象的なものとかありますか?

そうですね…やっぱり自分でブレンドしたウイスキーとか美味しいなあと思いますね(笑)あ、それこそ堂田さんのニューポットなんかは「うおっ」て思いましたね。

あっ、ありがとうございます。
僕の中では京都のKyoto Fine and Spiritsさんが発売されたJURAの28年は印象的でしたね。JURAも年数重ねるとこんなになるのかあと思っていました。

JURA28年(出所:Shinanoya food & liquor

ーーなるほど。飲んでみたいですね。私はロングローの19年をこの前頂いてめちゃくちゃ美味しいなあと思いましたね。それでは今度は草野さんから堂田さんへの質問ということで、草野さんお願いします。

はい。私は「堂田さん複数人いる説」を唱えていてですね(笑)
この間、堂田さんの亀田蒸溜所さんを伺ったときに本当にたくさんの取り組みをされていたのですごいなと。堂田さんの構想の実行部隊がいるとは思うのですが、同時進行でうごいているプロジェクトをすべて統括されていて、すごいエネルギーだなと思っていたんです。
 
いや、本当は2人いますっていう答えも少し期待しているのですが(笑)
堂田さんの原動力はどこからきているのでしょうか。

やっぱり津貫蒸溜所の取り組みをみて、常に進化しなきゃいけないっていう想いからたくさん動くようにしています。
 
私たちは新興蒸溜所のなかでも比較的遅めにできた蒸溜所なので、たくさんのことに取り組んでノウハウを蓄積していかないといけないなっていうのが真面目な回答です。
 
それと同時に、ウイスキーをつくるのがやっぱり好きなんですよね(笑)。
 これは言う度に反感を買うですが、うちの蒸溜所って僕にとっては「おもちゃ」みたいなものなんです。すごく言い方は悪いんですが(笑)
これを使ってどう遊んでやろうかみたいにいつも考えていて、あれもやりたいこれもやりたいとなってしまっているんです。
 
それこそつくり手になる前は、本当にウイスキーが好きで、つくりたかったんですが、やっぱりお金がかかると。あ、それなら自分の蒸溜所でつくった美味しいウイスキーを販売すれば、自分が美味しいと思うウイスキーもつくれるし、他人に迷惑もかからないと。
 
それがウイスキーづくりの道に進もうと思ったきっかけだったんです。
 
だから原価とか効率とかってあまり考えてなくて(笑)
本当に美味しいウイスキーがつくりたい。それだけなんです。

ーー真面目にふざけるっていう言い方なんですかね。とてもユニークなトライアルをたくさんされていますよね。津貫蒸溜所もたくさんの取り組みをされていると言われていますが、草野さんは堂田さんのどういった取り組みを見てスピード感を感じますか?

いや、もう全部ですね(笑)うちでやっていることって変わった麦芽を試してみたり、糖化温度や酵母の培養条件を変えてみたり、蒸溜のミドルカットとか、樽詰め度数を変えたら面白いんじゃないかな、みたいな考えたら誰でもできるようなことなんです。
 
ただ堂田さんがすごいのって、やっぱり物も必要だったり、そのための補助金申請の作文も自分で書かれていますし、それで設備も自分でいれて、ゼロから自分でつくっている感じがもうすごいんです。
 
僕らでやりたいなと思っていることも、もう既にやっていたりして。
いっぱい写真を撮らせてもらって「参考にします!」みたいな(笑)
 
日々勉強させてもらっています。

あんまり働いている実感はないんですけどね(笑)いま日本だけでも70近くある蒸溜所の中で、みんなと同じように海外産のモルトつかって、蒸溜してうちのシングルモルトです。って打ち出すのって、金太郎飴みたいになっちゃう気がするんです。
 
そこからどのように横道にそれていくか、もちろん美味しいウイスキーは追求するのですが、それを深掘りしていきたいですね。

ーーやっぱり個性ですよね。
お二人ともありがとうございました。

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