ウイスキーを愉しむ理想のシーンをつくる 〜第2回CELLARR SALONを終えて〜【後編/全2回】

ウイスキーのオンライン社交場、第二回CELLARR SALON「ウイスキーの杜」記事の後編です。
前編をまだご覧になってない方は、こちらへ。

お二人の2010年の出会いから、どう歴史がつくられていくのか。

CELLARR SALONの場のイメージ(出典:Watershed Distillery)

3. ブレンダーとしての仕事とは

ーーブレンダーの仕事って、途方もなく気が遠くなるなあと聞いていて感じるのですが、
実際は愉しい、しんどいなど、お考えを伺えますか?

ブレンドは面白いと思います。やる度に新しい発見があるからですかね。
私はよくセミナーで(ブレンドの特徴を、)「1足す1が、3にも4にもなる」と言ったりしますが、最近では「100足す1が200になる」とも表現しています。100の中に1を加えるだけで、全然違う特徴が顔を出したりするのですね。

香りの成分は同じような構成なのに、バランスが変わるだけで全く違うものになるのです。
その点、ウイスキーはまだ謎に包まれていますね。

あまり知られていませんが、実は最近、日本酒の古酒のブレンドをやったんです。
7つの蔵の日本酒のブレンドでした。最初はどうかなあ、と考えていたのですが、異質なものが入ると全然違うものになる、という特徴はやはりあったのです。益々ブレンドの面白さに気づきましたね。

A group of bottles and glasses with liquid in them

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輿水さんが仰られたように、ブレンドは面白い。けれども、同時にとても難しいです。

特に長期の熟成した原酒ほど、ブレンドしたてと数日、1週間と時間が経った後で、香味の印象が変わるんですね。そのため、ブレンドするときはその変化も想定しながらテストブレンドを重ねます。

ブレンドして新しいものをつくるためには、いろんな視点を持って、様々な角度から物事を見る必要があります。例えばワインですと、タイプの異なるものをブレンドすると、液体のpHが変わることだけでも変化が生まれます。それ故に、古酒のようないろんなタイプのお酒が加わると、想定以上の変化も生まれて難しそうと感じました。

ただ輿水さんのお話を伺い、私も日本酒のブレンドもやってみたいなあと思いました(笑)。

おっしゃる通り、ブレンドした後に、さらに後熟した姿を考えて評価をするのがブレンダーの仕事なんです。ブレンドした時の味と、ボトリングした時の味って全然違ったりするのですね。それを加味する必要があります。
バーテンダーさんはボトリング後の商品のありのままを評価するそれに比べ、ブレンダーはボトリングされた時にどのような味になるかを予測してテイスティングしています。その変化を予測する力がブレンダーの重要なスキルです。

ーーありがとうございます。とても興味深いお話しです。
こうした時間を愉しむ魅力についても、また色々とお話しがあるといいのかもしれません。
(略)
現在のジャパニーズウイスキー業界と今後の在るべき姿について、つくり手としてのお考えをお伺いできますか?

ジャパニーズウイスキーの蒸溜所は2010年頃まで10カ所程度だったのに対し、今では60以上と数が飛躍的に増えています。ご存知の方も多いように、21年2月にジャパニーズウイスキーの定義が発表されたことで、「ジャパニーズウイスキーとは何か」が明確になりました。定義が明確になったことは喜ばしいことですが、国内でつくったジャパニーズウイスキーだけでなく、海外の原酒を活用して手頃な価格で美味しいウイスキーをつくることも日本産ウイスキーの大事な歴史と伝統だと私は思っています。

そういったこれまでの経緯やニーズも踏まえて、これからも美味しい様々なタイプのウイスキーをつくると共に、新しく生まれてきた新規蒸溜所の方々とも切磋琢磨しながら、世界に誇れるジャパニーズウイスキーをつくっていきたいですね。

城太さんのお話に賛成します。現状に満足していてはいけない。
常に改良を重ねて、品質を考えていけば、ジャパニーズウイスキーの未来は明るいと思います。

4. 応募者の好奇心溢れる想いのこもった質問をピックアップ

ーー応募者の中で特に数が多かった質問や面白い質問をピックアップしてお聞きします。
まず最初の質問はこちらです。

お茶です。先ほど、日本酒の例も出しましたが、お茶は奧が深いなあと感じますね。
中国や台湾に出張で行ってましたが、その際にお茶屋さんでたくさんのお茶を試すのが愉しみでした。

お茶の世界ってすごく深いんです。
ウイスキーブレンダーという仕事をしていても、香りや味わいを利き分けられないし、どう表現したらいいかわからない。やっぱりすごいなと驚いていました。
やっぱり、その道のプロが本当に美味いものをつくろうとしているんだなと感じました。

輿水さんのおっしゃったように、私もお茶の奥深さを体験しました。アメリカに行く前にチューハイの開発をやっていた時、お茶類の探索をしたことがあるのです。中国茶は眺めて愉しむものから、香りを愉しむものなどバラエティーに富んでいて、魅了されました。

私はコーヒーが好きなのですが、コーヒー豆の産地や処理の仕方(発酵)によって、味や風味は大きく異なります。特に、ブルーベリーやストロベリージャムのようなフルーティな風味がするものを飲んだ時は衝撃的でした。
発酵が関わるとやっぱり面白いなあと思います。

ーーみなさん液体に偏るのが面白いですね。液体以外で思い浮かぶものなどありますか?

私は食べることも大好きなので、質問とずれちゃうかもしれませんが、熟成肉で感動的な美味しさを体験したことがあります。米国でオークの森を訪ねた時に食べた、45日間熟成させた骨付きの分厚いステーキ。長時間かけて肉の成分が分解されて、アミノ酸の旨みがでてくる。アメリカの肉は美味しくないと言う方がいますが、認識が変わると思います(笑)。

ワインとむちゃくちゃ合いました!

うーん。ちょっとピンと来ないけど、発酵と言ったら漬け物ですかね。

ーーお茶、コーヒーからエイジドビーフ、漬け物まで。
やはり、食べ物や飲み物をとっても多様な香りや風味があって面白いですね

グレートクエスチョンですね。新人のバーテンダーさんを含め、いろいろな方から同じような質問を受けます。

一般的に皆さんは、香りを「かたまり」として感じていて、ウイスキーを嗅いだ時、「甘い香り」「芳醇」のような言葉が浮びますよね。

先ずは香りに集中して、個々の香りの要素に分解するよう意識してみてください。少しずつ解像度が上がってきて、少しずつ様々な香りを感じてくると思います。
その次のステップが「表現すること」です。

先ずは自分が感じた香味を表現する際、飲食物に限定せず過去に体験したものを思い起こしてみると、ピッタリとくる表現が見つかるかもしれません。感じたままの香りを自分の言葉に置き換えて、素直に表現してみることをお勧めします。

例えば、私の場合は、ワインの仕事をしていた時に、イタリアワインを最初は、
「田舎のおばあちゃんの杉タンスに顔を突っ込んだような」と表現したりしました(笑)。
要は、ナフタリンだとか樟脳のニュアンスを表現したかったのです。

ウイスキーの場合は、ピート香は「ツンとした」に始まり、「スモーキー」。そしてスモーキーさにもたくさんあるので、どんなスモーキーなのか。
フルーティーさの場合は、リンゴ、洋梨、パイナップル、いろいろな香りがあります。ぜひ、普段から香りや味に意識を向けてみてください。
食べ物、飲み物の美味しさをこんな香り、こんな味、と表現することで、愉しみが広がるし、新しい香りや味の発見もありますし、表現すること自体が愉しいんですよね。
こういう愉しさが広がることで、日常が「ハッピー」になります。

田中さんが言い尽くしています。臨む姿勢、数をこなすと言われますが、いかに高い意識でやるかが問題です。自分の言葉で書き、他の人との違いを見ていくと、どんどん精度が上がっていきます。

私にとっては、輿水さんが「かつおぶし」と表現されていたことが印象的です。ウイスキーでこんな表現をしてもいいのか!と。

はい。共通言語として使っていました。
一応、開発者も「あ、確かにかつおぶしだね。」と納得してくれたので(笑)。

ジャパニーズウイスキーのつくりはとても特徴的です。ひとつの蒸溜所でここまで多様な原酒をつくり分けているところは他ではありません。

それと、他の国のウイスキーについてしっかりと研究する傾向があると思います。
スコッチのつくり手はスコッチしか見ていないですし、バーボンはバーボンしか見ていないところがある。

日本のメーカーはその点、様々な視点から、いろいろと、つくり方にこだわりを持っていると感じます。

私は、日本人のつくり手というのは、海外のつくり手とはまた違うように感じます。
なんといえばいいのか、職人的、目に見えない所に手をかけるというか。

海外では、日本のものづくりを、Craftsmanship(クラフトマンシップ)と表現されることが多いと思いますが、それよりも、”Shokunin”(ショクニン)という言葉をそのまま使うべきではないか、それくらい違うものに感じます。それだけ日本の「モノづくり」はこだわり抜いていると感じますね。

おもしろいなあ。Shokunin。

私もスイスにあるネスレのリサーチャーに、海外の人に日本のモノづくりをそのまま伝える言葉で、Craftsmanshipという単語を使うと正しく伝わっているのか。と聞いた際に、Craftsmanshipは工場長のようなイメージだよ。と伺ったこともあり、なにか違うなぁと感じていました。

確かに海外のつくり手にない、精神性、こだわりや技術がある気がしますね。

5. ウイスキーのオンライン社交場CELLARR SALON~参加者全員がつくり手と社交する時~

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CELLARR SALONの場のイメージ(出典:Watershed Distillery)

対談を終え、皆様お待ちかねのCELLARR SALON ウイスキーの杜コーナーへ。

自らの問いをつくり手に直接聞ける距離感の交流を通して、ウイスキーの魅力を肌で感じる時。
ウイスキーの杜は、参加してから初めてわかるお愉しみの場になります。

この日のためにスペシャルなウイスキーを開封されていた参加者の方や、
つくり手にずっと聞きたかったとウイスキーに関する温めてきた質問をぶつける方など、
思い思いにつくり手やウイスキーファン同士の交流を愉しんでおられました。

【参加者の声(一部抜粋)】

ウイスキーがもっと好きになる。そして、生活が豊かになる。素敵なイベントでした。
ー 30代男性

お二方へ質問させて頂けるのは、数名だけかと思っていましたが、参加者全員が直接つくり手と交流できる時間を確保してくださっていたことに驚きました。貴重な体験ができました。本当にありがとうございました。ー 30代女性

普段中々お目にかからないトップブレンダーお二人とお話が出来る機会など殆ど無いので、それだけでも大満足でした! ー 30代男性

普段はあまりウイスキーを飲む機会が少ない私ですが、ウイスキーの魅力にどんどん引き込まれましたし、お話をお伺いしていて鳥肌が立ちました。 ー 30代女性

参加者の皆様が本当に愉しそうにされていて、このような時間をもっと多くの方と体験したいと思った ー 20代男性

5. ウイスキーの魅力を紡ぐ。

ーー本日は愉しい時間を本当にありがとうございました!
最後にお二人より、今回のイベントのご感想を頂いてもよろしいでしょうか?

工場やセミナーで受ける質問とはまた違って難しい質問も多かったが、愉しかったです。
WEBの良さもありますが、次はぜひ対面でお会いできたら良いです。

輿水さんとの対談という、とても貴重な機会でしたし、参加者も少人数のイベントでアットホームな感じで、愉しめました。

みなさん、これからリアルイベントも増えると思うので、イベントなどで見かけたらぜひお気軽に声をかけてください。ありがとうございました。

ーーあっという間でしたが、お約束のお時間になりました。本日はこの辺りで。

今後ともCELLARRをよろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました!


ウイスキーのオンライン社交場CELLARR SALON。第二回。いかがでしたか。

このあとも短い時間でしたが、つくり手のお二人には参加者との懇親時間に参加頂き、CELLARR SALONを最後までお愉しみ頂きました。

ウイスキーを愉しむ理想のシーンをつくる。

これから、CELLARRに関わってくださる皆様と一緒につくっていきたいと強く思う会となりました。
CELLARR SALONでは、つくり手とファンの社交をもとに、ウイスキーの魅力をヒト起点で感じて頂くことをコンセプトに運営をしております。

次回のイベントは、以下からご覧ください。


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