バレーボール選手からウイスキーのプロへ。「人と違うことがしたい」佐々木太一さんの人生観とは

バレーボール選手から、ウイスキーのプロの道へ。
今回はそんな唯一無二のキャリアを歩む、サントリーの佐々木太一さんにお話を伺いました。

この記事では、学生時代・選手時代から、現在に至るまでの佐々木さんの人生観、ライフヒストリーをお届けします。


1. バレーボール選手時代とお酒の関わり

学生時代からバレーボール選手として活躍していた佐々木さん。20歳を超えて多くの学生がお酒を楽しみ始めるころ、佐々木さんはすでにアスリートとして活躍していた。

お酒やウイスキーとの出会いはどのようなものだったのだろうか。

「お酒は若い頃から好きで、ウイスキーも飲んでいましたよ。」

大学時代はウイスキーがブームだったわけでもなく、特段好んで飲むことはなかった。しかし、大学3年の時に全日本シニアに入り、先輩方と世界各国をまわるようになった。そうするとお酒に触れる機会も多くなっていった。

その後サントリーに入社してから、よく飲んでいたのはバーボンウイスキー。遠征時は、わざわざ容器を詰め替えてまでウイスキーを持参していた。しかし当時は、ウイスキーは”どん底”の時代。銘柄などは関係なく、ただバーボンウイスキーがカッコイイと思って口にしていた。

一般の人からするとアスリートはアルコールを控えるのかなと思いがちだが、そんなことはないと佐々木さんは言う。

「ふつうに飲みますよ。むしろ、お酒に触れる機会は一般の方々よりアスリートのほうが多いですよね。パーティーとか、いろいろ機会がありますからね。」

現役時代、試合後のリラックスの時間にお酒を飲む。世界レベルで戦う日常の中で、お酒は大事な息抜きだったようだ。

2.人生を変えたブラジルでの経験

身体を悪くしない程度に飲んでいたが、お酒は人付き合いのきっかけにもなる。

お酒を通した深い人間関係が構築されるからこそ、体調管理がうまくいかないこともあった。そこにけがによる手術なども重なり、モチベーションが低下。バレーボールの結果も出ない。全日本への魅力も感じなくなった。「やり切った感」さえ感じていた。

そんな中、佐々木さんの変化を感じ取ったバレー部の上層部の方から「一度海外に行ってこい」と背中を押される。

そうして1999年、27歳の年にブラジルにバレーボール留学をした。この3か月のブラジル生活で、競技への姿勢、人間性、そして人生そのものが180度変わることになる。

言葉も通じない、通訳もいない環境。ブラジルにいる選手たちの、日本とはちがうプロ意識。すべてが刺激になった。

お酒を含め自分のこと全てをコントロールできるようになり、今まで以上にバレーボールに没頭した。Vリーグ5連覇を達成したのも、この人生を変えたブラジル留学のあとのことだ。

ブラジルでの経験、そして5連覇という快挙を達成していく中でトップとしての重みも感じるようになった。

「1番にならなきゃ意味がない。2位になったら負け。」

2005年最終シーズン時(出典:ご本人)

そんな1番へのこだわりとプレッシャーの中で戦っていた。負けて、本当に「やり切った」と感じた33歳で引退。そこからサントリーの営業として、新たなキャリアが始まった。

3.引退後、ウイスキーの道へ

引退後、営業として9年働いた。しかし、なにか「勝負している感」がなく、虚無感を感じていた。

そんな中、2007年にサントリー社内外でウイスキーを啓発する「ウイスキーアンバサダー制度」というものが誕生し、佐々木さんはそのアンバサダーに就任することになる。

佐々木さんを選出したのは当時の大阪支社長。のちに支社長に選出の理由を聞くと「あまり忙しくなさそうだったから」と「喋れるから(人にウイスキーを伝えられそうだったから)」というような、なんともシンプルなものだった。

しかしこれが、アスリートとして活躍した男の心に新たな火を灯すことになる。

ウイスキーアンバサダー就任時(出典:ご本人)

ウイスキーアンバサダーの研修のひとつとして、山崎蒸溜所を訪れたことがあった。そこでのセミナー講師の話におもしろさを感じると同時に「自分でも上手く喋れる!」と思った。

「喋れるから」と佐々木さんを選出した支社長の読みは、間違っていなかったようだ。

サントリー自社のことだけではなく、他社のことも調べる必要があった。調べているうち、たまたま見つけたのが、ウイスキーの資格試験「ウイスキーコニサー」。その一番上の段階である「マスター・オブ・ウイスキー」は難しすぎて試験開催さえされていないことを知る。

「まだ試験開催していないこれなら、1番になれる!」

バレーボール選手時代、1番にこだわった佐々木さんならではの感覚なのかもしれない。

「ウイスキーは『人間が編み出したお酒』。自然にできるものではない。」

だからこそ深い歴史と情報が詰まっている。それを全て頭に入れないといけない。半端ではない勉強を重ね、試験が開催された2011年に見事一人だけ合格した。

繊細な感性や豊かな表現力も問われる難関試験の、唯一の合格者。それは、ウイスキーのプロとして逃れられない運命を手にしたことも意味していた。

周りから好きなことを仕事にできてうらやましいと言われることがあるが、佐々木さんはウイスキーが「ただ好きである」ことと「仕事において好きである」ということは別であると語る。

「1番になれるものが『ウイスキー』というものであり、それがたまたま嫌いではなかった。好きなことは他にもたくさんあるけれど、人と違うことがしたいという想いがありました。」

テイスティングをする佐々木さん(出典:ご本人)

バレーボールもウイスキーも我流でやってきた。「教えてもらう」より「盗みに行く」。それが、佐々木さんがなにかを習得するときのやり方だ。このようなやり方だからこそ、人と違う唯一無二の道さえも颯爽と切り拓いていけるのかもしれない。

バレーボール選手から、ウイスキーの道へ。

一見するとあまり関連のなさそうな2つのキャリアは、佐々木さんの人生の中でこのような形でつながっていたのだ。

4.「人と違うことがしたい」行動指針

「人と違うことがしたい」

この佐々木さんの行動指針とも言える考え方は、ウイスキーや仕事に関してのことだけにとどまらない。趣味に関してもそうだ。

例えば、車。国産車には絶対乗らない。輸入物が好きということもあり、歴代の愛車は個性的なものばかりだ。ここ7年くらいはロードバイクも趣味で、フレームを組むところから楽しんでいた。しかし、大事故を起こして以来、サドルに跨ったことはない。好きなことでもすぐ辞められる、そんな一面もある。

今は、ボディメイク(筋トレ)が趣味。意外とメジャーな趣味と思いきや、ここでも「人と違うことがしたい」精神を忘れていないのが佐々木さんだ。

「今めちゃくちゃお金をかけているのはサプリメントや資格取得。『サプリメントに一番お金使ってます!』なんて人、他にいないじゃないですか。」

筋トレも目標があると、体も諦めないし、頑張れる。あと10年かけて、ベストボディジャパンのレジェンドクラスに出るのが目標だ。

ボディメイクをしていると、食にも興味が湧いてくる。

栄養素にもかなり詳しくなった。買い物に出かけた時、気になるのは価格よりもパッケージ裏の成分表示だ。昨夏には日本健康マスター検定にもチャレンジし、2段階のコース「ベーシック」と「エキスパート」の両方を取得。

今は体のことを考えて、お酒を飲まない日もつくるようになった。

「いつまでも元気で、美味しくお酒を飲みたいからね。」

5.佐々木さんが考える、これからのウイスキーのあるべき姿

「業界に新規参入し、新しくできた蒸溜所が成長していくにはどうすればいいか」

「若者世代がものづくりの現場に魅力を感じていない」―――

近年、世界からスポットライトが当たり始めた日本のウイスキー業界だが、未だ様々な課題を抱えている。

現状の課題をふまえた「これからのジャパニーズウイスキーのあるべき姿」について、最後に佐々木さんのご意見を伺った。

熟成という過程を含むウイスキーを新規ビジネスとするには、企業にとって難しい部分があると佐々木さんは語る。

日本はものづくりの原点としてお酒といった嗜好品は得意分野のはずであるが、現在の新規参入に関する課題は深刻だ。しかし、出す樽がある大手企業と新規の蒸溜所はビジネスモデルも変わってくるのでなんとも言えない。

しかし、つくり手には「日本文化を守り抜く」というプライドを持っていてもらいたい。むしろ、持って当然である。

このようなプライドを持ってものづくりをする人が、若い人をはじめとして永続的に出てきてほしいというのが願いだ。

また、佐々木さんが昔も今も考えている、ウイスキーの目指す姿というものがある。それは、「女性がバーに行き、ウイスキーが語り合いの媒体となる」そんな光景だ。

女性が飲まないと、マーケットも広がらない。女性が銘柄や味について議論しながら、もっとウイスキーを楽しんでいる世界をつくりたい。

ウイスキーに携わる人間のひとりとして、佐々木さんが夢見ている理想である。

佐々木さんの理想が実現すれば、ウイスキー自体における世間一般のイメージもガラリと変わるのかもしれない。


以上、佐々木太一さんへのインタビューの様子をお届けしました。

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