ウイスキーはおじさんの飲み物?世界的ブレンダーが語る、ファンを魅了するウイスキーの要素とは【後編/全2回】

2.ウイスキーの背景にある、ストーリーに注目せよ

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少し話は変わってしまうのですが、関西と関東の出汁や醤油のように、販売地域によって味を少し変えている食品は意外と多いという話を聞いたことがあります。アルコールに関しても、九州出身だと度数が強い、ワインは都市部でよく飲まれる、といった地域による特性があるような気がするのですが、ウイスキーではそういった地域性は意識されているのでしょうか。

輿水さん(以下敬称略):
エリアによって売れるブランドが違うということはあるでしょうが、だからといってそれを意識して特に味のつくり分けを行うといったことはないと思いますね。少なくとも、僕のウイスキー作りにはありませんでした。

考えられる理由の一つとしては、ハイボールというのはむしろ異質な存在で、ウイスキーが好きな人はもともと消費者全体を眺めた中でもニッチな存在だと思っています。醤油など日常的に触れるものとは違って、入り口の段階である程度自分の意思を持って選択しなければウイスキーは飲まないので、そのニッチな層に地域性という考え方はあまり存在しない気がします。

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なるほど。確かに、飲み屋に行くと自然に選択肢として前に出てくるビールやハイボールといった他のアルコールと比較しても、ウイスキーはわざわざ自分で入り口に入っていかないと出てこないですね。

つまり、地域性にこだわるのではく、全国、ひいては世界中のコアなファンに向けた味が求められる、ということなんですか?

輿水:
はい。ウイスキーはそれだけ懐が深いといいますか、知りたいという想いがあったときに、地域に関係なく誰に対してもそれに答えられる内容を持っています。つくる側が、どんな想いで作った、どこにこだわった、どこがよそにない特徴でどこに注目して欲しいか、そういったつくり手の想いをウイスキーにのせる方が重要だと感じます。

どうしても、誰に向けて、どの地域に向けて、といったことを最初に持っていきますと、つくり手として目指してきたもの、こだわりが薄れ、芯のボヤけたウイスキーになってしまう気がします。

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先ほどの女性向けのウイスキーはない、といった話に通ずるものがありますね。

輿水:
そういう意味でも、シングルモルトは語ることがかなり多いウイスキーなので誰に対してもオススメできますね。実際、コアのファンの想いが集中しやすいのもシングルモルトです。

シングルモルトと比較すると、ブレンデッドウイスキーは様々な蒸留所の原酒を混ぜ合わせるので、ある意味ファンの皆さんでも理解が難しいと思います。間違いなく美味しくはあるんですけど、一言で語れない難しさというか、とんがったところがないといいますか、掴みどころがない印象がありますね。

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つまり、ストーリーを知るためにはシングルモルトがベストなんですね。

輿水:
分かりやすいことは間違いないと思います。自分で理解するにしても、誰かに語るにしても、シングルモルトの方が数段やりやすく、ブレンデッドウイスキーはかなり難易度が高いです。

それぞれのシングルモルトの魅力を生かしながら、グレーンウイスキーとの組み合わせにより更に美味しさを追求したのがブレンデッドウイスキーという関係ですから、一言ではとても語れません。

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消費者から見ても、違いがわかりやすい方が最初はいいですよね。ブレンデッドウイスキーは初心者にもおすすめ!という記事を見てから、私も最近少しずつブレンデッドウイスキーを飲むようになったのですが、感想は「美味しいなあ」に尽きてしまうことが多いです。ブレンデッドにもこだわりがあるのは重々承知しているのですが、やはり素人からすると全然わからないですね。

輿水:
そもそも、シングルモルトとブレンデッドウイスキーはウイスキーという枠組みの中で一括りにされることが多いですが、私にとってこの二つはそもそも楽しみ方も飲む場面も全然違うんですよね。

僕も毎日ウイスキーは飲むのですが、自宅でシングルモルトを飲みたいとは思いませんね。一言で言うと、疲れます。シングルモルトはそれぞれ強い個性を持っているので、訴えるものが強いだけに飲み続けると疲れてしまいます。

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確かに、家でのんびりしてるときに受け取るものが多すぎるとキツい印象はありますね。

輿水:
もちろん一杯だけ飲むとかだったらシングルモルトでもいいかもしれないですが、何杯も飲むのには主張が強すぎますね。どうしても構えてしまいます。

自宅で飲む場合は、もっと緊張感なくリラックスして飲みたいという気持ちの方が強いので、ブレンデッドウイスキーの方が適していると思います。ゆったりした気持ちで純粋に味を楽しめるのは、まさにブレンドの力ですね。

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一口にウイスキーと言っても、楽しみ方も個性もここまで違うのは面白いですね。自分のような素人目線だと、その大きな違いすらも知らないことが多い気がします。特に、これからウイスキーを飲み始めてみたい、と思っている初心者の方は、ネットのおすすめにでてきたブレンデッドウイスキーを飲んでこれがウイスキーなんだと思ってしまう方も多いと思います。

そういった方々にもこの記事が届き、ウイスキーの底知れぬ魅力に酔いしれていただけるといいですね。

A person holding a glass of beer

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出典:livedoor NEWS

まとめ

今回は、ウイスキーファンの特徴に焦点をあてながら、ウイスキーならではの特徴を紹介しました。輿水さんから飛び出すウイスキー作りの極意、その緻密で繊細な話に驚かれた方も多いかもしれません。みなさんも次にウイスキーを飲む際は、背景にあるストーリーにも着目してみてはいかがでしょうか。

CELLARR®︎では本記事以外にもウイスキーにまつわる様々な記事を執筆してまいります。つくり手の想いや技術、消費者には普段届かないような話をウイスキーづくりを現場から支える方々にお聞きして参りますので、ぜひお楽しみに。

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